可能性のあるアーティストを探索し、紹介していく特別BOXシート。アメリカNASAの火星探索船、マーズグローバルサーベイヤーにちなんで名づけました。ユニークなアート、傑作なアート、発見していただくのはあなたです。



  自分の気持ち、感じていることを表現する。それはアーティストとして当然のことでしょう。 しかしながら、そこに訴えるものがある、伝えたいものがある、それを自分の個性、スタイルを通じて発信する。 かつその表現に普遍性を持たせながら。 長年、アートとは時代の証人であり、メッセージであった。 混迷する平成の今日、身近な足許からアートを通じて発信される時代へのメッセージをどうぞ、感じて下さい。



ウエブマスター(M)と竹田憲司(T)の会話抄録

「それにしてもいい仕事場ですね」(神戸市東灘区のお洒落な建物にお住まいです)
「建築家の方に作ってもらった建物の半地下部分をスタジオにして使っています」
「六甲山の麓で環境もいいですね。震災の傷も大分癒えたようです」
「生まれは兵庫県の加古川という所ですが、親しんだ神戸がやはり好きですね」
「この竹田さんの独特の絵柄は何ですか?

「Lump(ランプ)と言って、塊という意味ですが、 心の塊を重ねていくということを表しています」
「竹田さんの絵を見ていると、アートで表現できるものは「美」「ヒーリング」だけではないということがわかってきますね。つまり、アートを通じて何かを語る、メッセージを発する」
「Lumpという形で、あることを伝えたいと思っています。言葉で語るのは簡単ですが、それ絵に表すのが仕事だと思っています」
「どれか一例をとって説明して下さい」
「ネットワークからの難破という作品ですが、現代では、ネットワークとは便利で必要不可欠なもの です。しかし、ひとたびそれが壊れてしまうと、もうどうしようもない、訳の分からない混乱した生活になってしまう。そのもろさを兼ね備えていると思うんです。ネットワークがもたらす情報とは、本来人間(性)のためにあるはずが、今はどちらかと言うと、利益のためにあるような気がしています。そこに警鐘を鳴らしたい、と」
「その他の作品には、ご自分の経験なども反映されていますか?」
「かなり強烈な体験はありました。こんなことが現実にあるのかって、そう思ったこともあります。 そうした体験が幾つかの作品に強く影響されてい ます」
「強いテーマ性があるのですね」
「そのぶん見る側に努力を促してしまう絵柄であるかもしれません。その努力をしない人はすぐに逃げてしまう(笑)」
「よく見ていると分ってきます。表現者として、あまり見る側におもねる必要もないでしょう」
「自分の長期的な目標としては、おばあちゃんに見てもらって、少しは分かってもらえる、そんな作品を制作していきたいと思っています」
「視覚だけではなく、頭をつかってじっくり見るべきアートがあってもいいと思います」



兵庫県加古川市出身。日本画制作に携わる父の影響で、幼い頃から絵に親しむ。 しかし、物心ついた頃はエンジニア志望。工業を専門に学び、音響メーカーに就職。そこで配属された部署は、マニュアルなど印刷物を制作する部門。本来望んでいた職種ではなかったため、出入りのデザイン事務所に早々に転職。仕事のかたわら、夜間の専門学校通いと神戸の画家である”故)石村正太郎先生”に師事。 実力も伴わない状態であったが、あるきっかけでフリーのデザイナーとして独立。 最初はエアーブラシによるイラスト製作をはじめ苦労を重ねるが、早くからコンピュータを導入し、CGもいち早く習得。今のスタイルにたどりつくまで多くは語らないが、様々な出来事があったらしい。「Lump」というスタイルを確立し、CGアーティストとして少しずつ支持者とファンを増やしながら21世紀の表舞台に登場してきた。 現在、神戸市東灘区在住。デザイン、アートなど幅広く活躍中。

1994 日本CGグランプリ'94 一般静止画部門 優秀賞
1996 プリンツ21グランプリ展 入選
1997 ART BOX大賞展入選、プリンツ21グランプリ展小品部門グランプリ
兵庫県立近代美術館 '97 県展 佳作
12月 神戸三宮にて作品展”軌/2 Orbit展”開催
1998 98ペッパーズギャラリーContenporary Primitive展(渋谷)参加
1999 ’99第回インターネット国際アート/フォトコンテスト佳作
2000 イタリア バリ"Pino Pascali Gallery"にて ArtExpo 2000 in Bariに参加
2001 作品集”Mind+Sculpture"を春に発刊
2003
作品の売上の一部を地雷撲滅活動の基金に当てるなど、自らのアート活動を社会の中で生かしつつ多方面で活躍中である。






静かな空間から生まれるメッセージ
静かで瀟洒なスタジオ。ここが仕事場。自転車やギターなどが幾何学的に並べられている。
「Lump\」 人間のような、人間の象徴のような、これらが「ランプ・塊」 静かで、物言わぬ彼らは、無言のメッセンジャーでもある。
「ネットワークからの難破」 身をよじらせているのは現代社会そのものなのか。それとも、今インターネットを使っているあなた自身かもしれません。
「ファミリー」 失われつつある瞬間でしょうか。それとも築き上げていく瞬間でしょうか。
作品を制作するのはもっぱら深夜。典型的な夜型だと言う。集中力を高めるにはうってつけの空間。本人も静かで控えめなアーティスト。声高に叫ばず、地道に自らの作品を世に問う。
(C) Kenji Takeda
竹田憲司「ギャラリー」
アートアットコムとしては新しいタイプの作家、竹田憲司。その活動と作品には今後も注目していきたい。