企画展であろうと、常設展であろうと、またアートの飾られている場所ならば プロアマ問わず、見に行きます。様々な形、色、メッセージ、多くの人に 見られることを待っている作品たち。当コーナーでは、そんなシーンを取り上げて 「アートディーラーの立場」からコメントいたします。 記念すべき第一回目は、北の大地北海道からお届けします。


Vol.1 デジタルとアートのコラボレーション「Di:CaFe」


 北海道帯広市のポポロショッピングセンターの2Fに、面白いアートの場があった。 「Di:CaFe」で、出会いカフェと読む。Diとは「デジタル」と「インターネット」のことで、地元の方のデジタルスキル向上をはかるために作られたインターネットカフェのようなものである。デジタル寺子屋構想とも言うらしい。ITの専門家から初心者まで、出入りする人達の出会いの場でもある。Macもかなりの数が置かれており、コーヒーは安い。ここにアートが展示してあるところが普通と違うところだ。

 ITゾーンを取り囲んで、アートがところせましと展示してある。雰囲気としてはベンチャーの胎動を象徴しているかのようであり、居心地は大変よい。全作品と出展しているアーティストの数も相当にのぼる。このアイデアはオフィス設計者のプランだが、アーティスト側は、無償で作品の拠出に応じているという。

 小品から、コラージュから、CGから、大掛かりな流木を使ったオブジェまで、幅広い作品構成は、見る人を飽きさせないものを持っていると感じた。全体として安易に流れていない点は好感が持てる。

 ところで、一般的にデジタル空間において、同時にアートに触れうる機会というものは、東京の銀座などでもまずあり得ないであろう。ここは、デジタルが目的で訪れたとしても、それだけで現代の生きたアートに触れることができる稀な場所である。


 そこで、このような展示方法は、現在のアーティスト支援という意味から言っても意義深いと思われる。企業側がアーティストを応援する、「メセナ」という言葉はもはや死語となった感もあるが、逆にITなどで元気のよい企業は、このあたりで、「ニューメセナ」ともいうべき支援活動を是非行って欲しいと思っていたが、そのきっかけのようなものを何となく予感できた。(注)

  ここに展示されている作品が、ベンチャー企業のミーティングルーム用にチョイスされていくなどという安直な発想もあるが、地元ITベンチャー企業がスポンサーとなったアートイベントなど、様々なタイアップは結構発想できるだろう。

  今はどちらかと言うと、デジタルはデジタル、アートは単なる飾り物という感が強いのは否めないが、ここが「ベンチャー企業」と「アーティスト」との出会いの場のようになったら素敵なことだろう。時間はかかるかもしれないが、是非期待したい。
 「Di:CaFe」は、21世紀のアーティストの生き方を提案する場所でもあるのだ。

>>Vol.2 第2回彩心展(彩心会グループ展)
>>>Vol.3 「展覧会 日頃の考え」 
>>>Vol.4 東京ポケット(停止した工場でアートが・・・)



■Di:CaFe出展アーティスト一覧
米山将治・池田緑・梅田マサノリ・岩澤美香・斉藤加江子・ 中谷有逸・カワシマトモエ・吉野隆幸・熊澤桂子

(注)芸術文化振興に貢献した企業に送られる「メセナ大賞2000」は、第一生命保険による「VOCA展の開催」に決まった。同展は、若手作家の作品を展示し、かつ大賞作品を同社が買い上げ、本社ビルに展示するというもの。但し、出展は美術関係者からの推薦された作家に限定されるなど、やや閉鎖的な側面もある。また第一生命が行っているあたりが、今日のメセナの現状を物語っているような気がする。





Home